ブエノスアイレスの夜

aoi_aoi2005-03-10



定時上がりでそそくさとみなみ会館へ足を運んだ。スペインの雰囲気にどっぷり浸った。

かつての過酷な出来事を忘れるために故郷を離れスペイン・マドリードで暮していた女(セシリア・ロス)は、父の危篤の知らせを受け20年ぶりに故郷アルゼンチンのブエノスアイレスへ帰ってくる。そこで若い男(ガエル・ガルシア・ベルナル)と出会う。
人と触れ合うことすらできないほど心を閉ざしてしまった女。以前に経験した恐怖から聴覚が過剰に敏感になっている。彼女の唯一の喜びは、男女を雇ってアパートの隣室で愛を交させ、それを聞きながら擬似体験を味わうこと・・・なんてマニアック。ぞくぞくする。
ある日女は若い男に目をつけ、隣室に通わせて毎夜小説を読ませる。ここでの二人は顔も合わさず互いの声を聴くだけ。直接的な触れ合いは皆無なのに、逆により官能的に描かれている。


なんと、本作のフィト・パエス監督と主演女優セシリア・ロスはご夫婦なんだそう。この女優さん、『オールアバウト・マイマザー』でも強くて優しい女性を本当に素敵に演じていたけど、ここでは情熱的な表情がとても印象的です。
本作は2001年の作品だそうで、ガエル君も今より少しあどけない感じが残ってる。ここではモデル?男娼?役ですが、やはり上手いです。中盤からとんでもない方向へと話が進んでいくのだけど(ネタは絶対ばらせません)そこらへんの不安定な青年の心情をとてもうまく表している。ちょっとはにかんだような笑顔もしびれるし、思いつめたような表情も素敵。アンチ・ハリウッドな出演映画選びといい、私の中で株は上がりっぱなしです。
そうそう、ガエル君のおケツもちらっとですが拝めます(おばさん的思考・・)


この話の背景には実際にアルゼンチンで起こった軍事クーデターがあり、それにより精神的に傷を負い、とんでもない方向へと進んでいくのだけれど、言い換えてみればそれは人間の心の弱さ、脆さを浮き彫りにしている、ということ。そう考えるととんでもなく怖い。