父、帰る 


ヴェネチア映画祭で金獅子賞と新人監督賞をダブル受賞したロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督のデビュー作。とっても覚えられそうにない名前だ・・。
母親と暮らす兄弟のもとに12年ぶりに父が帰ってきた。幼い頃の写真でしか覚えのない父。何故今頃?どこで何をしていたのか?言葉少ない父に戸惑う二人の兄弟の葛藤が凄まじい。訝りながらも父を慕う兄と、父の振舞いに納得がいかず感情を剥き出しにする弟。私は兄弟はいないけれど、こういうバランスってあると思う。二人ともに父を慕いたい気持ちと疑問に思う気持ちが両方あって、兄は弟の、弟は兄の振舞いを見て無意識にとるバランス。そういうのが痛々しい。


京都みなみ会館で日曜に観たのだけれど、実は前日の監督舞台挨拶の日に行く予定でした。寝坊してしまった・・・。映画を観終わって色々残る疑問点。あの箱の中身はなんだったの?お父さんの過去に何があったの?「監督のお話聞きたかった!」と悔やんだ。でも・・・。この映画で重要なのは謎解きでは決して、ない。ラストでの兄弟の(特に兄・アンドレイの)成長。まさに言いたいのはこれだ、と思う。そこに私はものすごく感動する。
兄弟は素晴らしい演技でしたが、私は特に兄役のアンドレイが素晴らしかったと思う。奇しくも監督と同じ名前の“アンドレイ”。監督の視点はこの兄にあるのでは、と勝手に私は思っている。このアンドレイ役のウラジーミル・ガーリン君は本作の撮影後にこのロケ地である湖で溺死されたそうです。どうしてそんなことが起こったんだろう・・・。

とにかく稀にみる心に残った作品だった。