列車に乗った男  


ある駅で降り立った男と、その土地で一生を過ごしてきた男。無口な流れ者と、過去を懐かしみ思い出話に耽る老人。偶然に一致した運命の日までを一緒に過ごすことになった、まるで接点のない二人の間に生まれる奇妙な友情。パトリス・ルコント作品では珍しく女性がほとんど出てこないこの映画。じーんと心に沁みる、味のある作品でした。大きなスクリーンで観たかった。

ルコント作品ではお馴染みのジャン・ロシュフォールが、いろんな感情を抑えたり、またある時は弾け出したりする老いた男を素敵に演じていた。
人に質問をしない、自分のことも話さない無口な男が、徐々にこの老人に心を開いていく過程がとても心地良い。とても自然。
パン屋でのエピソードが好き。パン屋に入ろうかどうしようか迷っているおじいちゃんがとてもかわいかった。
ラストでの回想シーンに涙した。かなしい、のと嬉しいの間の感情はなんて言うんだろ。切ない・・・かな?男がこの駅で列車を降りなければ、薬屋で二人が出会わなければ起こらなかったこと。出会ったからこそ芽生えた気持ち。
私にはまだわからない、生きてゆくってことはこんなにも素敵で、こんなにも哀しいというのを感じさせてくれる素敵な映画です。