家庭の医学  レベッカ・ブラウン著


母親が癌に冒され、治療や手術に立ち合い、看護し、やがて亡くなるまでを綴った、レベッカ・ブラウンのノンフィクション作品。
本書は目次として貧血・薄暮睡眠・転移・無能力・・・と医学辞典のように項目ごとに章を成しており、さらに各章の冒頭にはそれらの用語の定義が挙げられている。
以前に『体の贈り物』を読んだ時にも感じたことだけれど(http://d.hatena.ne.jp/aoi_aoi/20041110#p3)著者の、人の生死に対する誠実で真摯な眼差しに、静かな、けれども決して変わることのない思いがひしひしと伝わってくる作品です。
私たちは生きている限り、大切な人の死と対峙し、受け入れることを避けて通れない。毎日当たり前のように繰り返される人の生死は決して特殊な出来事ではなく、けれどもそれは主観的にみれば、個人の人生を揺るがすような大きな出来事でもありうるわけで。レベッカ・ブラウンの感情に流されることのない簡潔で短い文章は、より深いかなしみを受け入れる個人の強さみたいなものを私に感じさせる。


家庭の医学

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