都会のアリス

モノクロのざらざらした画面。淡々としていて数少ないセリフ。ヴィム・ヴェンダースのつくる映画はとても静かに、深く心に入ってくる。一度観ただけでひとつひとつのシーンがくっきりと心に焼き付き、そのシーンをまた観たくなる。ヴェンダースが敬愛してやまないという小津安二郎の映画を観た時のように。
アメリカを放浪するドイツ人作家・フィリップと、空港で出会った女性の娘・アリスがひょんなことから二人で旅をしているうちに芽生える、友人とも親子とも違う感情。フィリップは彼女を連れ行く責任に疎ましさを感じながらも、あきらかに彼女によって癒されていく。
アリス役の少女の少し生意気なはすっぱな感じがとても良い。子役にしてこの存在感。『パリ、テキサス』のハンター君といい、ヴェンダース監督はその映画にぴったりな子役を探す天才ですね。
旅中に二人が無人写真機で一緒に写真を写すシーンがとても好き。
こういう映画を観ると水野晴郎じゃないけれど「やっぱり映画って、いいものだなぁ」としみじみ思ってしまいます。