思いわずらうことなく愉しく生きよ 江國香織

江國さんの書く姉妹のお話はとってもいい。『流しのしたの骨』でも彼女は若い姉妹や兄弟が出てくるいわゆる家族小説を書いていたが、本作は彼女たちが大人になってからの小説という感じ。
私は一人っ子なので江國さんの書く姉妹小説がリアルかどうかは実感としてよくわからないけれど、同じ家庭で育ちながらもそれぞれが個性を持ち、互いにそれに共感したりまたは反発したりしながらも一生関わっていく。こういうお話を読むとやっぱり兄弟っていいなぁと思ってしまう。私も欲しかったなぁって。
『人は皆いずれ死ぬのだから、そしてそれがいつかはわからないのだから、思いわずらうことなく愉しく生きよ』という家訓を持つ家で育った麻子・治子・育子の三姉妹。それぞれが人生や恋愛に対する全く違った価値観を持ちながら、そういう自分の行き方に自身を持ちながらも、葛藤し模索しつつ生きていく。
江國さんの作品では初めてDV(ドメスティック・バイオレンス)問題が描かれていて驚いた。が、江國さんが生みだす独特な感性を持つ主人公におけるその問題は、他で見るものとはやはりちょっと違う。だからこそ、読んでいてどうしようもなく哀しい気持ちになってしまった。