妊娠カレンダー 小川洋子著


ISBN:4167557010
やっぱりこの人の文章はしっくりくる。なんだか馴染む。
同じ家で暮らす身ごもった姉の妊娠の過程を記録していくわたし。一見幸せな話かなぁと思いきや、そうでもない。超音波装置で撮った生まれてくる子供の写真を見せられても、徐々に突き出てくる腹を触っても、姉が子供を生むのだということをうまく飲み込めず実感できずに戸惑うわたし。そして本来幸せなはずの姉も、姉の夫も、ちっとも幸せそうじゃない。なんだこれはーと思いながらも妙にリアル。こういう感情ってどこから生まれるんだろうって思うんだけど、ある部分激しく共感してしまう。
どこか不気味な雰囲気と哀しさが漂う『ドミトリイ』も、小学校の給食室を眺める不思議な男と出会う『夕暮れの給食室と雨のプール』も、子供の頃に見たことあるような風景(デジャビュ?)のようで懐かしくもありもの哀しい。私は特に夕暮れの給食室と〜が好き。