黒と茶の幻想 恩田陸  


600ページを超える長編。長い。でも読み出したら早かった。
大まかなストーリーは、学生時代の仲間である利枝子、彰彦、蒔生、節子の旅。卒業から十数年を経た4人がひょんな事からY島(なんで屋久島って書かないんだろう?)に旅をすることになる。そこで彼らが語り、感じ、導かれていく先。
それぞれにいろんなものを抱えて生きていながらも、集まると一瞬にして昔に戻ってしまう瞬間。懐かしい、愛しい時間。でもそればっかりでもなくて。
4章に分かれていて、利枝子、彰彦、蒔生、節子それぞれが一人称で語っていくという形式が面白い。気が知れた仲間という安心感もあり、また知りすぎているからこそのそれぞれも思惑も交差する。そこらへんは、この著者上手いなーと思う。
この旅のテーマは『美しい謎』。それぞれ持ち寄った謎(ささいなものから重要なものまで)についてとめどなく語り合う彼ら。メンバーが皆話好きで会話が弾む弾む。この中に入ったら絶対楽しいだろうなーと思う。が、皆とても鋭い目を持っている人達なので少し怖い気もする。
かつて利枝子の親友であった美少女が鍵となり、謎はさらに深まっていく。彼女が一人芝居を演じる場面はとても印象深く、頭に焼き付く。