フランソワ・オゾン2作品

海を見る [DVD]  海を見る [DVD]


海の見える静かな島の一軒屋、赤ん坊とふたりっきりで夫の帰りを待つ女。そこに訪れた、一軒屋の庭にテントを貼らせてほしいと乞うバックパッカーの女。ふたりの女の間に流れる静かで奇妙な時間。


52分という中編作品においてここまで存在感のある作品になるとは。オゾン監督ものは長編しか観たことなかったのだけど、短いものになるほど彼の多才さに驚かされる。すごいの一言です。
静かで平和すぎる島での子供とふたりの時間に閉塞感を感じている女が、ふいに現れた正体不明の女と、それでも少しづつ打ち解けてゆく。
特に何が起こるわけでもないのに、観てる私は始終恐怖感を感じていた。表情のないバックパッカーの女に。怖いくらいしーんとした海に。なんかこう、鳥肌が立つ感じ。


こんな場所にずっといると、ゆるやかにオカシくなれるかも。


ラストも驚愕だけど、この作品は謎解きする必要はない。誰がどういう理由で、とか何故、とか関係ない。ただじっと観ているだけしかできない。

しかし、ただのスーパーに並んでいる肉なのに、オゾン監督が撮るとどうしてこんなに怖いんだろう。

途中、急にすごい映像が出てきます。いきなりなので、ぎゃってなった。食事中に観る映画ではないでしょう。食事中でなくともかなりダメージ受けますが・・


サマー・ドレス


こっちは一転して、とても素敵な気分になれる映画。若いゲイ・カップルと、その片方と海辺で出会う女の3人の、1日を描いてる。15分あまりの超短篇です。


ここで特筆すべきは音楽の使い方!Sheilaという人が歌うフランスポップスの『Bang Bang』という歌を、映画の冒頭で片方の男が踊りながら歌うのです。15分しかないのにこんなに歌っちゃうの?って感じですが、この歌がとってもいい。ゲイの人たちの女らしい一面が凝縮されて、すっごくかわいい。(男の人がみたら気持ち悪いって思うのかな・・)


題名のサマー・ドレスとは、男の片方が海辺で海水パンツを盗まれ、女が持ってるドレスを借りて帰るところから。はじめドレスを来た男の子はとても恥ずかしくて困惑してるのに、自転車を漕いでるうちになんだかどんどん嬉しそうな表情になってゆくところもすごくいい。何度も観たい映画だな。短時間でこんなに完成された作品を撮ってしまうオゾン監督、やっぱり恐るべし。


両作品とも別の意味ですごく好きになってしまった。